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半島を出よを読んで

上下巻を読み終わった。
長編小説なんて、しばらく読んでいなかったので、読みきれるかなぁと思っていたけど、吸い込まれて読んでしまった(^_^;)
寝る前に読むのは心配はしていたけど、あまりいい夢心地はしなかったと思う(-_-;)

作品はというと。
高失業率で停滞する経済、対米関係悪化し対外的にも孤立した日本。
そのような中、2011年春に北朝鮮軍約500人が福岡の一部を制圧してしまう。
それからの6日間。
攻めて来たことで、右往左往し混乱する日本政府、役人、自衛隊、警察関係者。
北朝鮮軍に素直に従う、福岡市職員や住民たち。
しかし、家庭が崩壊したりしてかなり精神的に病んでいる、犯罪歴のある少年たちが、占領軍と戦うという内容だ。

感想はというと、最初は読むのが辛かった。
近未来の日本が、惨憺たる姿であるのが辛かったし、少年たちの家庭環境も悲惨だったからだ。
ここまでひどい状況になっているとは思わないが、有事に混乱する日本政府は想像できる。
また、北朝鮮軍の拷問の描写もすごかった。
村上龍氏は、北朝鮮人の感情や生活の細かいところを描くために、ソウルで脱北者に直接インタビューしたとのこと。
軍事的な内容も細かく描かれていると思う。

無知というのは、怖いと思う。
軍隊は、命令が絶対だ。
なぜとかどうしてとかいうことを考えずに、命令されたことだけに従うということは、本当に恐ろしい。
かつて戦前の日本軍もそうだったし、今の北朝鮮軍もそうだろう。
作品では北朝鮮軍の兵士が福岡を制圧してから、警戒心が少しほどけるというのか、少しだけ日本人に心を開くというのか、そういう部分も描かれている。

それから、暗に完全なるIT社会に、警鐘を鳴らしている部分も描かれているように思う。
作品では、住基ネットのことが触れられている。
だがその一方で、少年たちはアナログな戦い方をしているところが面白い。
こんなにうまくいくのかは、疑問だけれども・・・。

私が印象に残っているのは、「貧困」と「家族生活」だ。
これは、北朝鮮軍も少年たちにも共通することだと思う。
日本の未来について、村上龍氏が、ある番組に出演したときに言っていたことを思い出した。
これからどんどん格差のある社会になっていくが、多くの人はあまり真剣に考えていないし、そういう社会になっていくという認識も無い。
だから、ある日突然気づいたら自分が貧困層になっていたとき、その人は怒り出すだろう。
人はそうなった時、その人の思想が左右問わずにその方向に向かうだろうし、国家や社会に対して反逆していくだろうと。
作品に描かれている少年たちがそうだったのだが、彼らは日本国家ではなく北朝鮮軍に対して、そのような行動をとっていく。
そして幼少期の家族との生活は、人間形成の上で非常にインパクトを与えるということが作品に表れていると思う。
それが荒んでいると、人によっては生涯トラウマになることもあるし、大人になってからの職業選択や性格に影響を与える。
これも北朝鮮軍兵士も少年たちにも共通して描かれていたように思う。

日本は戦後、基本的に戦争を経験していない。
日本は有事の際、どのような行動をとるのであろうか。
占領されてしまえば、作品にも描かれていたが、軍にこびへつらう連中も出てくるだろう。
苦しい体験をしたことの無い日本人なら、なおさらだ。
それだけ私たちの生活は、平和なのだと思う。
その平和な生活も、最近では格差あるものになりつつあるが。
いろいろな意味での「格差」。
経済的、生活環境、家庭など・・・。
そのような意味で、貧困や家族についても、考えさせられた作品だった。

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